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5.3 相関係数
5.3.1 まえがき
波浪中を航行する船舶の構造部材には、船体運動および波浪による波浪変動応力が生じる。(以下、波浪変動応力を単に応力と言う。)船体構造の強度設計には、船の生涯において部材に生じる応力の頻度分布と最大値が必要となる。この応力の頻度分布の推定法としては、船体運動をストリップ法により計算し、ハルガーダの断面力、横断面の水圧分布および内部貨物の慣性力を外力として有限要素モデル化された船体構造に負荷して解析対象部材の応力応答関数を求め、それをさらに統計解析し応力の長期分布を計算する方法が現在最も精度良いとされている。この種の応力計算法として、縦、横強度トータルシステムあるいは離散化解析法(DISAM)などが挙げられる。本SRでも離散化解析法に準ずる応力解析法を採用し、前章で示された様な手順で各構造部材に生じる応力の応答関数が計算されている。この方法は、種々の積み付け状態、航行条件のもとにおいて、位相の異なる複数の荷重が作用する構造部材の応力応答が計算できることに最大の利点があるが、反面、計算量が膨大な量にふくれ上がるため実行には多大な労力を注ぎ込まなければならないのが欠点である。
複数荷重が作用する部材の応力の長期分布を計算する別の方法として、福田等により提案された相関係数法がある。福田等は、垂直曲げ、水平曲げなどによる単一成分応力の長期予測値からそれらの合成全応力の長期予測値を荷重相関係数を用いて近似的に求める方法を示している。この方法は荷重成分ごとの応力応答を計算する手間は上記の離散化解析法と同等であり、長期分布の段階で応力を合成する面倒さもある。しかし、各種波浪中の航行条件、積付け状態に対し、各部材ごとに荷重成分の相関係数がデータベース化されていれば、設計の初期段階でまだ構造配置が未定のときの応力の予測方法として有効な方法であると考えられる。
本報告では各種荷重の相関係数の理論計算値と実船計測値を比較検討し、相関係数法による応力合成法の基礎データを得る。
5.3.2 荷重間の相関係数
異なる2種類の荷重がある部材に作用しその結果それらの荷重により部材に生じる応力を考える場合、大略次のように分類できる。
(1)垂直曲げと水平曲げなどの断面力によりある部材に生じる応力のように、部材にたいして縦荷重(軸荷重)成分というべき同じ性質の荷重が異なる振幅、位相で作用するときの合成応力に関するもの。
(2)船底あるいは船側の部材のように、作用する荷重が断面力による軸荷重成分と水圧による積荷重成分とが同時に働く。軸荷重成分により積荷重応力が影響され非線形構造応答をし、その結果両者の荷重による合成応力が複雑なものとなる。
異なる荷重が作用するときに両者を相関係数で関係づけて合成応力応答を求める場合、(1)、(2)の荷重形態では荷重間の相関係数の成り立ちが異なることがわかる。すなわち、(1)では単純に荷重間の位相差によって合成応力が影響を受けるが、(2)では荷重間の位相差に加え両者の相互影響成分が合成応力に関係する。したがって、この変動する複数の荷重が作用するとき、部材に生じる合応力を各荷重間の相関係数を用いて合成する場合、相関係数は一つは荷重間の位相差による成分、もう一つは荷重の相互作用による成分とがあることが予測される。船体構造は複雑で非常に高次の不静定構造であるので、相関係数は荷重間の位相差と相互作用影響が複雑に入り交じったものとなる。本報告では、荷重間の位相差による相関係数に着目し、A船の縦、水平、ワーピングおよび軸応力の相関係数について理論計算と実船計測の解析を行う。
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